【市川ブックフェア2026】サエキけんぞうさんトークイベント「言語化の技法」事前資料
市川ブックフェア2026では、ミュージシャン・作詞家のサエキけんぞうさんを招いて、トークイベント「言語化の技法」を開催します。
テーマが「言語化」ということもあって、小学生から中高年まで幅広い年齢層の参加が見込まれています。参加希望者の関心も多様であることから、今回は言語化について、イベントの前に共有しておきたい事柄をまとめておきました。
なお、言語に関する研究は、言語学や脳科学、発達心理学など幅広い分野で行われ、たくさんの学説があります。ここでは、比較的多くの支持が得られていると思われる学説をベースに、トークイベントと関連の深い項目を集めています。
言語
そもそも、言語とは何でしょうか?
辞書では、次のように説明されていました(下線はクラナリ)。
音声や文字によって、人の意志・思想・感情などの情報を表現・伝達する、または受け入れ、理解するための約束・規則。また、その記号の体系。
『大辞泉』
ちなみに、世界最古の文字は、イラクにあるウルク遺跡から出土した粘土板や石板に刻まれたウルク文字(ウルク古拙文字)といわれています。
約800枚(諸説あり。5000枚以上とも)の粘土板は、紀元前3300~3200年頃のものです。つまり文字の歴史は約5000年ということになります。
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| ウルク文字(出典:Wikimediacommons) |
粘土板の一番上は、魚だとわかります。ウルク文字は、5000年前の情報を、今を生きる私たちに伝達しているのです。
このように、言語は情報伝達、ひいてはコミュニケーションに使われています。ほかにも、私たちが頭の中で「今日の晩御飯はハンバーグがいいだろうか、カレーライスがいいだろうか」などと考えを巡らせる思考にも、言語が使われています。
言語化
辞書『大辞泉』の表現を借りれば、私たちの頭の中にある意志・思想・感情などの情報を、音声や文字を使って伝えることが、言語化です。言語化のプロセスの一例が、下の図です。
私たちは、目で見て、鼻でかいで、耳で聞いて、肌で感じて、口で味わうほか、「心臓がバクバクする」「首と肩が痛い」といったことを絶えず感じています。
感覚で得たすべての情報が一度に脳に押し寄せると、脳は処理し切れずにパンクするので、重要なものだけを選んだり、関係のないものを無視したりします。
知覚
脳は感覚から受け取った情報を「何であるか」と意味づけをします。例えば、手で畑の土を触ったときに「土だ」「軽い」といった意味づけをします。
認知
認知には、次のプロセスで進みます。
1 過去に経験したことから得た情報などの記憶を参照する
2 多くの仮説を検証する
3 結論を選ぶ
例えば、手で土を触ったときに「土だ」「軽い」という情報が得られたら、「軽いということは、土が乾燥して、植物に水が足りていないではないか」「植物が枯れるのではないか」といった仮説を検証し、「水やりをしよう」という結論に至ります。
言語化
神経や筋肉を連携して、口で話したり、手で書いたりします。
今回の例では、周囲の人に「みんなで畑に水をまこう」と呼び掛けるという言語化が行われます。
言語化のプロセスに障害があると、「言いたい言葉がなかなか出てこない」「文章を組み立てられない」といった状況になります。
また、言語を覚えるには、ただ言葉を脳に入れていくだけでは不足していて、周囲との関わりが影響を及ぼすといわれています。
○子ども向け生成AI搭載おしゃべりアプリの危険性について:言語学的・心理学的・認知科学的観点からhttps://user.keio.ac.jp/~kawahara/pdf/KawaharaEtAl_Kiyo2025_GenerativeAI.pdf
言語化での送り手と受け手との情報の一致・不一致
一般に言語化については、送り手の頭の中の思考が、そのまま受け手に伝わるように言葉で表現できると、「うまくいった!」と判断されます。言語化がうまくいかなければ、自分自身は「本当の思いが伝わらない」と、そして周囲も「何を考えているのかよくわからない」と、ストレスがたまっていくことは珍しくありません。
ストレスがたまる例として、AさんがBさんに「14日までにこの仕事を終わらせて」と頼んだとします。しかし、14日の午後5時になっても、Bさんは仕事を終らせずに、漫画を読みながらお茶を飲んでいます。
Aさんはイライラして、Bさんに「14日までって言ったよね」と伝えます。するとBさんは「15日に日付が変わる前という意味かと……」と驚いてしまいます。
「14日まで」は、Aさんの頭の中だと「14日の午後5時」で、Bさんでは「14日の午後23時59分」と、異なっていたわけです。
このように送り手と受け手との情報が一致していなければ困るのは仕事の現場、そして教科書、マニュアル、実用書、カルテといった記録などです。
しかし、情報が一致してなくても、言語化がうまくいっている場面もあります。
Cさんが、近所のDさんとばったり道で会って、「今日も暑いですね」「本当に、ばててしまいます」「あはは」「おほほ」と立ち話をしたとしましょう。Cさんが気温が高くても体調に変化はなかったとしても、Dさんの返答でストレスをためることはありません。
似たようなケースとして、エッセイや物語が挙げられます。物語は、作者の意図とは違う受け取り方・解釈を読者がします。そして読者一人ひとりで、解釈も異なります。
送り手の情報を受け手が正確に理解するよりも、かっこいい、すてき、うれしいといった「響く」という要素が関係しているのではないでしょうか。
「響く」ことが重視されているのが、歌詞やキャッチコピー、若者言葉などです。「よくわからないけれど、なんだか響く」という例が、JR東海の「そうだ 京都、行こう。」です。いきなり「そうだ」と始まって、何がそうなのだか理解はできませんが、記憶に残ります。
○送り手の頭の中=受け手の頭の中(理解する>響く):患者への説明、カルテ、ビジネス、教科書、マニュアル、実用書
○送り手の頭の中≒受け手の頭の中(理解する=響く):エッセイ、物語、立ち話
○送り手の頭の中≒受け手の頭の中(理解する<響く):歌詞、キャッチコピー、若者言葉
言語化で「うまくいった!」の指標の例
書く言語化の一例が本で、言語化がうまくいったかどうかが販売部数で表されます。また、売れ続ける人、コンスタントに依頼を受ける人がいることから、言語化には上手・下手、熟練・初心者、先生(師匠)・生徒(弟子)といった違いがあるとわかります。
サエキけんぞうさんの言語化の技法
サエキけんぞうさんがボーカルと作詞を担当しているパール兄弟は、今年でデビュー40周年を迎えます。
サエキけんぞうさんは歯科医として勤務しながらミュージシャンとして活動していた時期もあり、作詞やエッセイなども手掛けてきました。
今回は、頭の中の曖昧なイメージを明確な言葉に変えるためにどのような作業を行っているのか、一度聞いたら忘れられないような「響く」フレーズはどうやって生まれてきたのかについて、サエキけんぞうさんにお話ししてもらいます。
サエキけんぞうさん略歴
高校時代に結成したバンド「少年・ホームランズ」の楽曲でボーカルと作詞を担当。徳島大学歯学部に在学中の1980年に「ハルメンズの近代体操」でミュージシャンとしてデビュー。1983年にパール兄弟を結成し、1986年「未来はパール」で再デビュー。約15枚のアルバムを発表。1985年より1992年頃まで歯科医師として日大松戸歯学部補綴学第一教室に勤務経験もあり。作詞家、プロデューサーとして活動の場を広げ、多数のアーティストに歌詞を提供しているほか、アニメ作品のテーマ曲も数多く担当。大衆音楽(ロック・ポップス)を中心とした現代カルチャー全般、特に映画、マンガ、ファッション、クラブ・カルチャーなどに詳しく、新聞、雑誌などのメディアを中心に執筆も手がける。2011年に刊行した『ロックとメディア社会』(新泉社)で第24回ミュージックペンクラブ音楽賞著作出版物賞を受賞。近著に『はっぴいえんどの原像』(2023年、リットーミュージック)がある。また、コワーキングスペースco,do(市川市八幡3-7-2)の管理・運営にも携わる。2026年10月3日には、LINE-CUBE 渋谷公会堂で40周年ライブを行う。
サエキけんぞうHP https://saekingdom.com/
主な著作
『歯科医のロック』(河出書房新社)
『ヌードなオニオン』(河出書房新社)
『東京百景』(NHK出版)
『ネット限定恋愛革命 スパムメール大賞』(文春文庫)
『さよなら!セブンティーズ』(クリタ舎)
『ヒットの種』(東京ニュース通信社)
『ロックとメディア社会』(新泉社)
『はっぴいえんどの原像』(リットーミュージック)
主な作詞
PSY・S「Lemonの勇気」1987年
サディスティック・ミカ・バンド「薔薇はプラズマ」1989年
沢田研二「単純な永遠」1990年
モーニング娘。「愛の種」1997年
小泉今日子「ビッチ」1998年
アニメ「WORKING!!」シリーズオープニング・エンディング曲2010~2015年
アニメ「マクロスΔ(デルタ)」に登場する戦術音楽ユニットのワルキューレの楽曲「LOVE!THUNDERGLOW」2016年
PSY・S「Lemonの勇気」抜粋
NewDayLemon色がうずいて水が体を流れていくNewRaySunLightカケラ散らして木々の吐息が輝いてる忘れてしまおうGrayな季節昨日を写したネガのフィルムを捨てる勇気
パール兄弟「君にマニョマニョ」抜粋
マニョマニョマニョマニョマニョマニョ君にマニョマニョコーラル・ブルーの浜辺にポヨンと現れた艶なロングソバージュなぜだかトントンうまくいったのさ微笑みも金の日差しも薄い膜に包まれてる地球の言葉で話せば鼻まで感じてくるのさ
言語化について書かれた図書館の蔵書(一部)
言語発達障害学 (標準言語聴覚障害学 )玉井ふみ/編集--医学書院
ことばの遅れが気になるなら 接し方で子どもは変わる(健康ライブラリー スペシャル )古荘純一/監修--講談社–
「判断するのが怖い」あなたへ 発達障害かもしれない人が働きやすくなる方法(ディスカヴァー携書 )佐藤恵美/[著]--ディスカヴァー・トゥエンティワン
最先端研究でわかった頭のいい人がやっている言語化の習慣堀田秀吾/著--朝日新聞出版
「何回説明しても伝わらない」はなぜ起こるのか? 認知科学が教えるコミュニケーションの本質と解決策 今井むつみ/著--日経BP


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