行徳可動堰はどのようにして「可動」になっているのか(2026年9月12日更新)

 行徳可動堰(ぎょうとくかどうぜき)は江戸川の設備で、ゲート(門扉)の開閉で川の水位を調節します。普段は、海水が江戸川を上がっていくのを防ぐため、行徳可動堰のゲートは閉まっています。

 2026(令和8)年9月9日は、大雨が続いたことで江戸川の水位が上がり、ゲートが全開にされました。前回は2021(令和3)年の台風第19号(令和元年東日本台風)のときだったので、7年ぶりのことです。
 9月9日19:04から全開だったゲートは、11日11:48に全閉となりました。

ゲートが上がっていく様子(出典:国土交通省 江戸川河川事務所X)

 関東地方では9月に雨が続き、国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所は、埼玉県春日部市の首都圏外郭放水路に水が流れ込む動画を9月7日のに公開しました。

首都圏外郭放水路の仕組み(出典:国土交通省 江戸川河川事務所)

倉松川の水が第3立坑に流れ込む様子(出典:国土交通省 江戸川河川事務所X)


 江戸川の上流で、埼玉県春日部市にある庄和排水機場では、9月7日14:20に江戸川への排水を開始しています。

庄和排水機場(出典:Googleマップ、一部改変)

 この江戸川への排水と、行徳可動堰の全開は関係しているのかもしれません。


クラナリ ※この記事の初出は『クラナリ』2021年1月21日


 「堰(せき)」とは、河川の水を制御するため、河川を横切る形で作られた施設。ダムや堤防とは、以下の点で違うようです。

●堤防

洪水の際に町にまで水があふれ出ることを防止
地面よりもかさ上げして海岸や河岸などに設ける構造物

●堰堤(えんてい)

川の流れをせき止めたり、土砂の流出を防いだり、水量を調整したりするために、川や渓谷に築かれる構造物

●ダム

基礎地盤から固定部の天端までの高さが 15m 以上の堰堤
流水の貯留による流量調節が目的

●堰

基礎地盤から固定部の天端までの高さが 15m 以上の堰堤
堤防に接続
 〇分流堰 河川の分流点付近に設けられていて、水位を調節
 〇潮止堰 塩水が川に上って来るのを調節
 〇取水堰 取水のために河川の水位を調節
 〇河口堰 河川の下流部に設置される


 堰は構造によって2つに分けられます。

①可動堰 

ゲート(門扉)によって水位の調節ができるもの
 〇引上堰 上下に動くゲートを持つ
 〇起伏堰(転倒堰) 堰を立ち上げたり倒したりする

②固定堰(または洗い堰) 

水位の調節ができないもの


 「堰」なだけに水の流れをせき止めるわけで、水をためることだけが目的ではないということです。

江戸川区から見た行徳橋

 行徳橋の横にある行徳可動堰については、引上堰で「シェル構造ローラゲート」なのだそうです(ちなみに、以前は「ローリングゲート」)。ゲートをワイヤロープで斜めに引っ張り上げていて、ワイヤロープは可動堰の上部で巻き上げられています。

江戸川特定構造物改築事業 (行徳可動堰改築)  より



巻き取られているワイヤロープ

 旧江戸川と江戸川の分岐近くにある行徳可動堰は、分流堰・潮止堰・取水堰の3つすべての役割を果たしているのではないでしょうか。通常はゲートを下げて海水が上ってくるのを防ぎ、洪水のときはゲートを上げて江戸川の水を東京湾に放出しているそうです。
 私たちの知らないところで、日々の暮らしが守られているとわかります。

 余談ですが、2021(令和3)年1月に撮影した、古い行徳橋の断面です。

2021年1月撮影の撤去される古い行徳橋

「あれ? 薄い気がする……」と思ってしまいました。軽くて丈夫な構造なのでしょう。
 古い行徳橋は、行徳可動堰の管理を目的として、1956(昭和31)年に供用された橋なのだそうです。
 「長年、お疲れさまでした」と伝えたいですね。


■参考資料
〔構造令 第 5 章〕 堰とは - 国土交通省
https://www.cbr.mlit.go.jp/kawatomizu/kouzou/pdf/16_08seki.pdf

江戸川特定構造物改築事業 (行徳可動堰改築) - 関東地方整備局
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000069210.pdf

江戸川 特定構造物改築事業 (行徳可動堰改築) - 国土交通省
https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000654940.pdf

国土交通省 関東地方整備局 江戸川河川事務所
https://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/index.html

国土交通省関東地方整備局江戸川河川事務所 行徳橋の架替え進む(道路構造物ジャーナルNET)
Powered by Blogger.