「おひとりさま」が多数派になることで地域社会はどう変わるのか ~千葉県市川市では単身世帯の割合が年々増えている
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| 総世帯数に占める1人世帯・2人世帯・3人世帯・4人世帯・5人以上の世帯の割合(縦軸は%)データ出典:国勢調査結果(市川市) |
千葉県市川市がまとめている令和7年国勢調査の「人口等基本集計結果」で、単身世帯(1人世帯、一人暮らし)が総世帯に占める割合は、年々増えていることがわかります。
単身世帯については、メディアでは「おひとりさま」という表現が使われることも珍しくありません。おひとりさまには、次のパターンが考えられます。
①一人っ子で未婚。両親は他界した。
②きょうだいがいて、未婚。家族や親戚とは離れて暮らしている。
③配偶者に先立たれ、子どもはいない。親戚とは離れて暮らしている。
④離婚をし、子どもはいないか、音信不通。親戚とは離れて暮らしている。
⑤離婚をし、子どもとは別居。親戚とは離れて暮らしている。
⑥配偶者に先立たれ、子どもとは別居。親戚とも離れて暮らしている。
⑦配偶者に先立たれ、子どもはいるが親子関係が破綻。親戚とは離れて暮らしている。
首都圏では、現在、35~64歳の「おひとりさま」が増えているという報告もありました。市川市ではどうなのでしょうか。
「おひとりさま」という言葉を世に広めたのは上野千鶴子氏。「おひとりさま」がタイトルに入った著作が多数あり、一部では“おひとりさまの教祖”と呼ばれているようです。
『おひとりさまの老後』(法研)などの「おひとりさま」は、本の内容から、一人暮らしを指していると考えられます。
ただ、上野千鶴子氏はフェミニストとして有名な社会学者のため、「おひとりさま」=「女性の一人暮らし」というイメージが持たれがちです。『おひとりさまの老後』についても、「非婚女性のために書いた」と上野千鶴子氏はインタビューで語っていました。
ちなみに、NHK教育テレビで放送されているETV特集の「おひとりさま 笑って生きて、笑って死にたい」、そして『週刊ダイヤモンド』2022年7月16日・23日合併号の「ひとり終活大全」特集では、タイトル・記事中の「おひとりさま」は一人暮らしを指していました。男女は問いません。
ずっと未婚、配偶者と死に別れ、子供は最初からいないか、成人して遠くに行ってしまった――。最後はみんな“おひとりさま”。
言葉としては一人暮らしのほうがわかりやすいと思うのですが、本や番組のタイトルは『一人暮らしの老後』「一人暮らし 笑って生きて、笑って死にたい」とはなっていません。一人暮らしよりも「おひとりさま」のほうが受けがよいという判断なのでしょう。
そもそも「おひとりさま」という言葉は、一人客を指していました。デジタル大辞泉(小学館)で以下のように解説されています。
おひとり‐さま【▽御一人様】 の解説「一人」を敬って、また丁寧にいう語。おひとかた。[補説]飲食店などで一人客を指していうことから、近年、「遊園地などグループ利用の多い施設を、一人で利用して楽しむ人」「精神的に自立しており、一人で行動できる人」「未婚または配偶者との別離により、一人で生活している人」など、さまざまな意味で用いられている。
「おひとりさま」に敏感に反応したと思われるのが、岩下久美子氏です。2001(平成13)年刊行の『おひとりさま』(中央公論新社)の著者で、おそらく、本のタイトルに「おひとりさま」を初めて使った人です。
Amazonでの商品説明では、『おひとりさま』について以下のように記載されていました。
「おひとりさま」とは、「個」の確立ができている大人の女性。仕事も恋もサクセスするために身につけるべき生き方の哲学。「ひとりの時間」を大切にする現代女性のために。01年9月に急逝した著者のエッセイ。
「仕事も恋もサクセス」。フレーズに時代を感じます。
『おひとりさま』が刊行された当時は、「女性が一人でレストランで食事してもいいじゃないか!」「女性が一人でホテルに泊まってもいいじゃないか!」「別に一人だって恥ずかしくないし、肩身の狭い思いをする必要はない!」という文脈で、「おひとりさま」という言葉が女性の一人客に限定して多用されたと推測できます。
それが高齢化社会で一人暮らしの老人が増え、「独居」「孤老」をマイルドに表現する言葉として「おひとりさま」がメディアで使われるようになったのでしょう。
女性のほうが長生きということもあり、「おひとりさま」人口は女性の割合が高くなっています。総務省統計局のデータだと、65歳以上男性の7人に1人、65歳以上女性の5人に1人が一人暮らしです。
平成は女性が一人で外食や宿泊をすることで「おひとりさま」という言葉が注目を浴びたようですが、令和になると女性が一人で自宅で最期まで暮らし続けられるかに興味の対象が移っています。まさに時代の変化。
これまでの日本では、病気などで自立した生活を送れなくなった高齢者は、家族や親戚が支援したり、面倒を見たりするのが当たり前とされてきました。
しかし、これも時代の変化で、支援してくれる家族や親戚がいない、または、家族や親戚には頼りたくない・頼れないケースが増えてきました。
同時に、超高齢化社会で、人生の質や生き方も問われるようになっています。
誰でも年を取れば、筋肉も内臓も、免疫力も精神力も衰えます。東京都健康長寿医療センター研究所によると、65歳以上の約16%が認知症であると推計されているとのこと。
長く生きれば、認知症になるし、がんなどの病気にもかかりやすくなるのが自然の摂理。
平成の「仕事も恋もサクセス」とは大きく様変わりして、「どのように人間関係を築いてきたのか」「率直に自分の思いを伝えられる関係にあるのか」「孤老のリスクをどう捉えるのか」が、令和の「おひとりさま」問題だといえそうです。
■参考資料
『東京ミドル期シングルの衝撃: 「ひとり」社会のゆくえ』 東洋経済新報社


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