小さなローカルフェスが、地域の未来をつくるきっかけに

 「うわ! かっこいい」「すごい」と評判になり、視聴者の印象に強く残る広告があります。そして〇〇広告賞を受賞したとしましょう。
 だからといって、その広告が成功したことにはなりません。むしろ失敗している場合があるのです。

 広告が何のために作られているのかといえば、商品を宣伝するためです。
 たとえかっこいい広告を作ったとしても、商品が動かなければ、それは失敗ということ。
 
 端的な例は、イタリアのブランドであるDolce&Gabbana (ドルチェ&ガッバーナ)の広告動画。
 インパクトが強く、映像的には優れているのかもしれませんが、中国で反感を買い、結局商品は売れなくなってしまいました。

 「ウケる」よりも「売れる」ことが指標となるわけです。

 同様に、ローカルフェスにも指標があります。

 ローカルフェスの一つといえる地方の商店街のお祭りについては、数が減っているそうです。それには商店街自体が衰退しているという問題以外に、お祭りをやっても成果が得られないという理由があります。

 商店街のお祭りの指標は、動員数ではありません。お祭り期間での売り上げでもありません。
 お祭りをきっかけに、1年中お客さんが来て、毎月の売り上げが立つことです。
 極論を言えば、お祭りに50人しか集まらなくても、その50人が商店街の固定客になれば成功。1000人を動員しても、お祭り以外の日に客足が途絶えたら、活性化につながらないので失敗になるわけです。

 このような話が、市川市内の商店街でも実際にあったようです。古くからお店を出している人が「お祭りは労力に見合わない」と判断し、やめてしまった状態とのこと。




 そんな中、「100円商店街」「まちなかバル」「まちゼミ」といったイベントが注目を集めるようになっています。この3つは商店街を活性する「三種の神器」と呼ばれているそうです。
 かなり簡略化しますが、100円商店街とは、店頭に100円で買える商品を並べることで商店街全体を100円ショップに見立てるイベント。まちなかバルは、数枚つづりのチケットを購入することで、お得にハシゴ酒ができるイベント。まちゼミは、店主や店員が講師となって専門知識などをお客さんに教えて、商店街やお店のファンを作るというイベント。
 市川市内でもこうした手法を取り入れたローカルフェスが開催されていました。
http://www.city.ichikawa.lg.jp/common/000139260.pdf
http://www.city.ichikawa.lg.jp/eco01/1111000110.html

 ローカルフェスについては、主催者によって指標は異なります。開催自体を自分たちで楽しめればいいということもあるでしょう。動員数かもしれません。
 『クラナリ』の「ローカルフェスのつくり方」特集で取り上げる「こまぱく ~参道狛犬万博2018 in市川市~」「Have A Good Day Motoyawata」「EDOROCK MUSIC&ART FESTIVAL (エドロック)」については、それぞれに指標は異なっていました。

 こまぱく主催者の山元環樹さんは「常に企画書を眺めて、コンセプトを忘れないように気を付けました」と話していました。指標を見誤らないように心がけたことが、たった1人で開催したフェスで市川市内外から500人を動員するという成果が出たのかもしれません。


 今後は、指標が異なるローカルフェスを組み合わせるという手法も生まれるかもしれません。多くの商店街では空き店舗が1つや2つあるので、店舗オーナーと相談したうえで、商店街のお祭りのときにこまぱくのようなローカルフェスを誘致するのです。
 こまぱくの場合、狛犬がテーマなので、地域にある神社の由来や狛犬の分類について山元さんに語ってもらえば、ローカル色も出せます。

 余談ですが、地元の狛犬をモチーフにした商品開発も検討できそうです。

 こまぱくでしっかり集客してもらえれば、商店街の人たちは祭りの準備などで疲弊せずに「どうやって固定客をつかむか」という1点に集中できるのではないでしょうか。
 1つのローカルフェスにおいて複数の指標を持ってしまうと、立ち位置を見失い、作業に翻弄される可能性もあります。その点では、指標が異なるローカルフェスをコラボさせることが大切。

 山元さんのように個人レベルで趣味などを発表する人が増え、小さなローカルフェスがどんどん開催されたら、なんだか楽しい地域になりそうです。

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たった1人の会社員がへそくりで開いたローカルフェスで500人も動員!  <こまぱく ~参道狛犬万博2018 in 市川市~>
https://life-livelihood.blogspot.com/2019/02/1500.html

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