「市川リトリート」 ぜいたくを知る大人たちが心と体を休める隠れ家だった
東京で働いて、遊んで、寝に帰るだけの場所。
グリーンもそこそこあって、子育てするにはいい場所。
| 桃の花をめでる大人たち(出典:『写真で見る わがまち市川』) |
100年ほど前の話。
松葉の緑と桃の花のピンク、梨の花の薄紅色に彩られた町がありました。一面に咲き誇る花を眺めながら、ゆったりとお酒を楽しんでいる大人たちの姿が見えます。
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| 桃の花 |
澄んだ川には水遊びをするために人々が訪れ、川辺にはオシャレなカフェが。ちょっと離れたところには、バーベキューを楽しんでいるファミリーの姿がありました。
丘の上は、色とりどりの鳥たちや小動物がいる動物園とアスレチック、プールがあって、子どもたちも楽しんでいます……
実は市川はそんな町だったのです。
里見公園がある場所に存在した「里見八景園」は、動物園やプール、音楽堂などが一体化したレジャーランドでした。
丘の上は、色とりどりの鳥たちや小動物がいる動物園とアスレチック、プールがあって、子どもたちも楽しんでいます……
実は市川はそんな町だったのです。
里見公園がある場所に存在した「里見八景園」は、動物園やプール、音楽堂などが一体化したレジャーランドでした。
| 出典:広報いちかわ2023年5月6日 |
また、JR下総中山駅の北側には、ホテル、劇場から遊園地まで備えた「群芳園」がありました。今だと、ディズニーランドと周辺のホテル群のような感じになるのでしょうか。
どうやら大正期の市川は、東京のお金持ちの別荘地だっただけでなく、旦那さんたちがお妾さんを住まわせた場所でもあった模様。
その意味でも、大人が遊ぶための町だったのです。
少子高齢化で人口が減っていくとしても、高度成長期に無理に宅地化した場所に松や桃が植えられ、ゆったりとくつろげる空間になっていけば、それはそれで悪くない気もします。
夜もネオンでこうこうと明るい状態だったり、騒々しい雰囲気だったりするのは、昔ながらの「大人のワンダーランド」とは違う気もします。
歴史的に見ると、市川は東京のリトリートという役割を果たしていました。リトリート(Retreat)は、避難、隠れ家などを意味します。
明治・大正・昭和を生きた小説家の永井荷風は、晩年、市川に移り住みます。その理由の一つは、急激に変貌する東京で失われていく風景や文化に嘆き、疲れてしまったことでした。ですから、荷風にとって市川はリトリートの役割を果たし、老いた文豪は市川の風景に心癒されたのでしょう。
| 出典:『永井荷風 ひとり暮らしの贅沢』著/永井 永光、水野 恵美子、 坂本 真典 新潮社 |
ワイワイと盛り上がって楽しむ、ハイテンションな場所は、東京。
ホッとくつろいで、ゆっくりと心身を休ませられる場所は、市川。
静けさや落ち着き、それでいてちょっと気取った「隠れ家」感が、市川らしい風景なのかもしれません。
ホッとくつろいで、ゆっくりと心身を休ませられる場所は、市川。
静けさや落ち着き、それでいてちょっと気取った「隠れ家」感が、市川らしい風景なのかもしれません。
■主な参考資料
レファレンス協同データベース 現在の下総中山駅の前にあった「群芳園」について知りたい

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