「市川リトリート」 それは大人が心と体を休める隠れ家

 東京で働いて、遊んで、寝に帰るだけの場所。
 グリーンもそこそこあって、子育てするにはいい場所。

 そんなイメージもある市川ですが、これはごく最近の話かもしれません。

 財を成した大人たちが、ひっそりと隠れて遊ぶ町だったようなのです。


大人たちが
遊ぶ場所だった

 100年ほど前のお話。

 松葉の緑と桃の花のピンク、梨の花の薄紅色に彩られた町がありました。一面に咲き誇る花を眺めながら、ゆったりとお酒を楽しんでいる大人たちの姿が見えます。

 澄んだ川には水遊びをするために人々が訪れ、川辺にはオシャレなカフェが。ちょっと離れたところには、バーベキューを楽しんでいるファミリーの姿がありました。

 丘の上は、色とりどりの鳥たちや小動物がいる動物園とアスレチック、プールがあって、子どもたちも楽しんでいます……

 実は市川はそんな町だったのです。

 里見公園がある場所に存在した「里見八景園」は、動物園やプール、音楽堂などが一体化したレジャーランドだったとのこと。

 また、JR下総中山駅の北側には、ホテル、劇場から遊園地まで備えた「群芳園」があったそうです。今だと、ディズニーランドと周辺のホテル群のような感じになるのでしょうか。

 どうやら大正期の市川は、東京のお金持ちの別荘地だっただけでなく、旦那さんたちがお妾さんを住まわせた場所でもあった模様。
 その意味でも、大人が遊ぶための町だったのですね。

「歴史は繰り返す」なら
人口減も悪くない

 「歴史は繰り返す」のならば、戦争や高度経済成長を経て成熟社会になったこれから、市川はもう一度、大人のワンダーランドになるかもしれません。

 少子高齢化で人口が減っていくとしても、人間が住まなくなった地域に松や桃が植えられ、ゆったりとくつろげる空間になっていけば、それはそれで悪くない気もします。

 夜もネオンでこうこうと明るい状態だったり、騒々しい雰囲気だったりするのは、昔ながらの「大人のワンダーランド」とは違う気もします。
 たとえるなら、アイ・リンクタウン展望施設でのライトダウンイベント。あえて照明を落として、暗さを楽しむわけです。

 静けさや落ち着き、それでいてちょっと気取った「隠れ家」感が、市川らしい風景なのかもしれません。
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