昔と今とでは違うことが多い問題 ~地形、呼び名

 市川市内には、「がけ崩れ警戒区域」が存在します。令和元年8月1日現在だと、88カ所が指定されています。けっこう多いのではないでしょうか。その理由について、市川市の地形の特徴とともに、調べていました。

 下の写真は、2022年3月23日に撮影しました。場所は真間4丁目で、弘法寺の周辺です。

 いかにも「崖崩れが起こりそう」という、木の生え方です。写真奥は、崖を補強するために行われている工事だと推測します(間違っていたら、ご連絡ください)。

 偶然、近くで住宅工事が行われていました。

 奥に写っている斜面には、丸太のような木が地面と水平に何本も並べられていて、崖崩れを防ぐ工夫がされていたと考えられます。

 ここで、高校の地理の教科書を思い出してみましょう。余談ですが、まだ若かりし頃、「洪積世」「沖積世」という言葉を習ったことを、うっすら覚えています。

 現在の教科書だと、「更新世」「完新世」に置き換わっています。

○更新世(洪積世) 約260万年前(約170万年前、約200万年など諸説あり過ぎ)から約1万年前まで
○完新世(沖積世) 約1万年前から現在まで

 それに伴って、更新世(洪積世)に形成されたと我々が教わった「洪積台地」は、単に「台地」と呼ばれるようになりました。

 台地の上の面(周りよりも高くなっている平坦な部分)を「台地面」、台地面を取り囲む斜面を台地崖(だいちがい)、台地の下を崖下(がいか)といいます。

 市川市は下総台地の西の端にあり、台地面・台地崖・崖下が存在します。

埼玉県から千葉県に続く黄緑色の部分が下総台地
「20万分の1日本シームレス地質図」(国立研究開発法人 産業技術総合研究所 地質調査総合センター)

 井村隆介 鹿児島大学准教授によると、台地の周りの切り立った崖が、決してもろいわけではないとのこと。
 崖に木が生えることで、表面が「土壌化」して、軟らかくなるのです。そして雨が降ると、土壌化した部分が崩れて「表層崩壊」、崖崩れが起こります。
 つまり、木が崖崩れの原因ということになります。

 私は「木が根を張ることで、土が保持されて崖崩れが起こりにくくなる」と思い込んでいました。真逆です。


 冒頭の写真で写っている部分の上には、弘法寺古墳があります。
 弘法寺古墳は全長43mの前方後円墳で、台地の崩壊により半壊状態と説明されています。
 この古墳が作られた6世紀後半~7世紀前半は、台地面はもっと広々としていて、作った人たちもここが古墳が崩れるような場所だとは思っていなかったに違いありません。



 弘法寺のある台地の崖崩れは、大変なものだった推測できます。その理由は、「欠真間」という地名の由来に「真間の欠けた(崩れた)土砂でできた土地」という言い伝えもあるからです。
 こうした説があるからには、昔の人々は「めちゃめちゃ崩れとるやん……」と、恐ろし気に台地崖を眺めていたはずです。

 今、目の前に広がっている光景と、昔の人々が見ていた光景は、時代ごとに大きく異なっています。
 そして、昔、教科書を読んで覚えた言葉などは、アップデートしなければならないのだと、「更新世」「完新世」で思った次第です。
 

 
地質学時標図 Wikipediaより



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