【コミュニティづくり再入門】市川市学習交流施設 市本で「地域コミュニティづくり」を考える5 地域コミュニティは、つながりなのか、しがらみなのか
挨拶はするけれど、それ以上の関係性を持ちたくはない。
迷惑をかけたくないけれど、迷惑をかけられるのはもっと嫌だ。
都市部では、近所づきあいに対して、このような思いを抱いている人も多いのではないでしょうか。
近所づきあいをはじめとした地域コミュニティは、つながりなのか、しがらみなのか。
地域コミュニティの例でよく挙げられるのは、自治会です。
ルーツは「五人組」という説があります。
小学6年生用の学研の資料によると、豊臣秀吉が1597年に京都でこの制度を作りました。
江戸時代に五人組という制度は使われていて、農民5軒を1組にして、お互いに見張らせたり、共同で責任を取らせたりしました。目的は、支配。
明治維新の後は、国として五人組を組織していなかったのですが、各地に制度的なものとして残っていたようです。
転機は、1937~1945年の日中戦争です。
1940年に、内務省が「部落会町内会等整備要領」を発令し、市には「町内会」、町村には「部落会」が国によって法的に整備されました。
戦争への動員が目的で国民を支配するための組織で、1942年には、大政翼賛会の下部組織として位置づけられました。
こうした性格を持つ組織だったので、戦後、連合国最高司令官総司令部(GHQ)も問題視したのでしょう。1947年のポツダム政令第15号「町内会部落会又はその連合会等に関する解散、就職禁止その他の行為の制限に関する件」により、町内会・部落会の廃止・解散が命じられました。
この政令は、1952 年のサンフランシスコ講和条約によって失効。
こうして、自治会などの地域コミュニティがつくられるようになりました。
ここまでの流れを見ると、いわゆる「地縁」が時の支配者や行政に利用されてきたことが明らかです。
その反省でしょう、自治会などは行政の末端組織でなく、あくまでも自主的な活動のための組織であることが、第二百六十条の二「認可地縁団体は、民主的な運営の下に、自主的に活動するものとし、構成員に対し不当な差別的取扱いをしてはならない」などで示されています。
とはいえ、実態はどうなのでしょうか。
朝日新聞社の記事「本音をぶっちゃけ 自治会組織のココがイヤ」を読むと、「民主的な運営の下に、自主的な活動をするもの」でもなさそうです。
●自治会・町内会が市役所や区役所の下請けになり、行政の目的達成に無理やり協力させられている。自分たちで活動できるとはほど遠く、山ほど行政から指示がおりてきます。(神奈川県 男性 60~64歳)●村八分が行われています。加入自由のはずが、入るのが当たり前で、加入しないと無視され「変人だ」と陰口をたたかれる。(神奈川県 男性 65~69歳)
こうした意見を目の当たりにして、「しがらみだな」と感じてしまうのですが、地域住民の感覚に反して、コミュニティブームが2回ほど起こっています。
ブームといっても、官製ブームという印象。その背景には、以下のような危機感があるようです。
〇家庭内の問題など、微妙な分野まで行政が対応しなければならなくなってしまう
映画『男はつらいよ』シリーズでは、おせっかいな隣人が登場します。
正直なところ、主人公のフーテンの寅さんは、困った人です。渥美二郎さんの雰囲気でごまかされて(?)しまいますが、言ってることもやっていることもなかなかにひどい。
そんな寅さんをたしなめたり、寅さんの家族を支えたりしているのが隣人でした。
第1作が公開された1969年前後では、家庭の問題に、おせっかいな隣人がシェルターの役目を果たしていたと推測できます。
各家庭の問題に行政がどこまで介入したらいいのか、悩ましいところでしょう。その点で、おせっかいな隣人が求められていると考えられます。
また、寅さん的存在の人物も、市の職員が介入するのか、子どものころから知っている顔見知りのおっちゃん・おばちゃんが口出しするのかで、態度も変わってくるはずです。状況の改善に、おせっかいな隣人のほうが効果的なケースも多いのではないでしょうか。
〇治安が悪くなり、犯罪が発生しやすくなる
防犯関係の専門家が、犯罪の抑止に効果的なものとして挙げるのが「地域の目」。住民同士がにこやかに挨拶していたり、道路を掃除していたりして、注意を払っている地域では、犯罪がしにくいという心理になるのだそうです。「割れ窓理論」の一種といえます。
〇地域経済が悪化する
代表的なものが「シャッター商店街」。「ここはさびれている」というインパクトが強く、シャッター商店街のある地域にわざわざ住もうとする人は少ないでしょう。住民が減り、地域内でのお金の動きが悪くなって、税収が減り、公共サービスに支障を来し、住民が減る、という悪循環に陥る可能性が高いといえます。
また、商店街は買い物をするための場所だけではありません。雇用を生み出すほか、各種イベントを行って地域コミュニティのつながりを強くする役割もあります。
ただし、シャッター商店街の元店主たちは、この状況には困っていないという記事が、オンライン文春にありました。この記事を読んで、「なるほど、固定資産税が絡んでくるから、シャッターを閉めたまま放置しているのか!」と理解ができました。
さぞや元店主たちは中心市街地の荒廃ぶりを嘆き、商店街再生に向けて「良い知恵」がないか頭をひねり続けているに違いないと、考えるのは都会人にありがちな発想のようだ。商店街の元店主たちに話を聞くと、実は彼らの多くは「ちっとも困っていない」のだ。
地域コミュニティを「つながり」として作っていきたい人。
「しがらみ」として避ける人。
「あってもなくても、ちっとも困らない」という無関心な人。
地域コミュニティについて、利害関係はさまざまなようです。
■参考資料
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