再開発はどうしてタワマンがセットなのだろうか

  タワーマンション、略してタワマンには、定義はないとのこと。一般的には、地上階数が20階以上、高さが60mを超える建築物をタワマンと呼ぶようです。
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 1964(昭和39)年の東京オリンピックに関連して、高層化の歴史は始まります。建設ラッシュが起こり、1963(昭和38)年に特定街区制度、1963(昭和38)年に容積地区制度が作られて、高さ31mを超えるビルが建てられるようになりました。
 1968(昭和43)年に竣工した「霞が関ビルディング」は、高さが147m、36階建ての日本初の超高層ビルです。
 また、1969(昭和44)年に制定された都市再開発法では、老朽化した建物が多い市街地を再開発して、高度利用を図り整備することを目的として、市街地再開発事業が定められました。

 タワマンについては、1971(昭和46)年に東京都港区三田にできた、高さ52m、19階建てのツインタワーである「三田綱町パーク・マンション」。そして、1976(昭和51)年に埼玉県さいたま市(旧 与野市)にできた、高さ66m、21階建てのマンション「与野ハウス」が、「タワマンの先駆け」としてネットなどで紹介されています。

1960年代、急激な経済成長とともに都市部の住宅のありかたが問われていました。
低層住宅が密集していた東京に“空に住まう”という画期的な提案を行い、日本初の超高層マンションである「三田綱町パーク・マンション」が誕生しました。

“空に住まう”

 いやぁ、かっこいいですね。

 1997(平成9)年には建築基準法が改正されて、日照権や容積率の規制が緩和されました。その影響で、住宅密集地でもタワマンが建てやすくなったようです。

 それにしても、再開発は必ずといっていいほど、タワマンがセットになっていませんか。
 少なくとも、JR市川駅とJR本八幡駅周辺は、そうなっていますよね。

 理由の一つには、建物を高層化することでできる新たな床面積である保留床(ほりゅうしょう)が関係しているようです。

再開発ビルの床は権利床と保留床に分かれます。
権利床は権利者の方々が取得するものです。所有していた土地・建物の価値に見合う広さの床を取得します。これを、権利変換と言います。
保留床はデベロッパーが取得するものです。再開発ビルの建設に提供した資金に応じた広さの床を取得します。
市街地再開発では、これら基盤整備と再開発ビルの建設を公共性の高い都市計画事業として実施します。地方公共団体はこの都市計画事業が適正に実施されるように指導・監督する一方で、事業費の一部を交付することで資金面から支援します。

 保留床が広いほど、利益も増えるということですね。
 また、行政については、高層ビルの一部の床を使って役所などの機能を移すことができます。市川駅南口地区市街地再開発事業だと、市川駅行政サービスセンターや南口図書館がそれに相当します。

 国も都市再開発支援事業として、補助金を出しています。耐震性や防災上の観点から、老朽化した住宅の建て替えが重視されているようですね。

 そんなこんなで、タワマンあるいは高層ビルがセットになった再開発が進んでいるのだと考えられます。

 市川市の隣の東京都では、再開発ラッシュ。「100年に1度」といわれる規模で進んでいます。

 ただ、トラブルも発生しているようですね。都知事選では、外苑前の再開発も争点の一つでした。


 また、訴訟も起こっています。


 景観の問題に加えて、「これから東京でも人口が減少して高齢化が進むと予測されているのに、タワマンなんて大丈夫なのか」「維持できるのか」という心配もあるのではないでしょうか。

国立社会保障・人口問題研究所が22日に公表した将来推計は、東京への人口集中が加速するとした一方、2040年からは東京も人口減少局面に入るとの見通しを示した。ただ、区市町村ごとにみると、23区と多摩、島部地域ではその推移に大きな差がみられた。

東京都を除くすべての県で2020年から2050年にかけて人口が減少し続けます。
▽千葉県が628万人余りから569万人に。

 そんな中、ジブリの森美術館がある東京都三鷹市では、タワマンなしの再開発を検討しているとのこと。
 2011年をピークに人口減が始まっている兵庫県神戸市は、2020年からタワマンを規制しています。

確かに、都心居住を後押しすれば、目先の人口は増えるだろう。街の中心部にタワーマンションを誘致しても、人口増を図ろうとする自治体もある。

しかし、その人口増に対して、言わば「逆張り」をしているのが神戸市だ。街全体のバランスをとって、持続可能性を維持する。そのために、市場原理に任せるのでなく、行政が街づくりに大胆に切り込む一石を投じたわけだ。

吉と出るのか凶と出るのか、結果が出るまでには時間がかかるが、この新しい手法には全国から注目が集まりつつある。


 このように、高層化ありきのスキームは見直されつつあります。ただ、再開発については、上記の記事にもあるとおり「吉と出るのか凶と出るのか、結果が出るまでには時間がかかる」のが現実です。
 東京の隣の市川市では、東京に先行して人口減少が始まっていると考えられる2040年頃に、再開発について問い直す時期が来そうです。そのときに働き盛りになっている世代に、今の自分たちが何を残せるのか、考えたいと思います。



■参考資料
まちづくりの未来 〜人口減少時代の再開発は〜

タワマンはもういらない? まだ必要? 建てて「いい場所」「悪い場所」をじっくり考える
 
「日本初のタワマン」が建てられた、超・意外な街とは?

都市再開発支援事業(令和5年度)

駅前再開発、脱タワマン
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